インフルエンザが流行する時期になりました。
救急外来でもコロナよりインフルエンザに罹患している方が多くなっています。
皆さま、十分にお気を付けください。
ところで、パーキンソン病をご存知でしょうか。
脳の変性疾患であり、高齢になるほどかかりやすくなります。
好発年齢は60代以降であり、特徴的な症状としては主に何もしていない時に手や足の震えが起きる「安静時振戦」、手足の筋肉がこわばる「筋固縮」、身体の動きが遅くなり最初の一歩が出るのに時間がかかる「すくみ足」や「小刻み歩行」などの運動症状が主に挙げられます。非運動症状としては自律神経症状、認知障害、嗅覚障害、睡眠障害、精神症状などがあります。
日本では1,000人に1~1.5人くらいの割合で患者さんがいると言われています。
脳のドーパミンが低下することで動きが緩慢になり、体が不自由になってしまう病気です。
指定難病の一つであり、常にドーパミンを補ったり、ドーパミンを活性化させるなど内服薬で治療する必要があります。薬で症状を緩和することができますが、完治することは難しい病気です。原因は完全には解明されておらず、ほとんどが遺伝しませんが、遺伝するものもある(5%未満)と言われています。
筋肉の固縮が強くなると、スムーズな動きがしにくくなります。治療薬の副作用もありますが、車の運転での咄嗟の判断でブレーキを踏むなどの操作が難しくなるため、運転をすることは難しくなります。歩行障害が進行するとちょっとした段差での転倒を繰り返しやすくなります。
自律神経症状として立った際に急に血圧が下がる「起立性低血圧」、「便秘」や「頻尿」があります。
嗅覚異常が生じると味覚も低下し始め、味がわかなくなると食欲低下につながり食事量が減ってきます。食事摂取が難しくなると、栄養の摂取方法として点滴栄養や胃瘻を造設するなどの方法を考える必要があります。
多様な症状が起こるゆえに非常に難しいご病気ですが、治療を受けると平均寿命とほぼ変わらないとされています。が認知機能低下が起きるとその後のQOLはかなり低下するため、予後には大きく影響するとされています。
私が受け持った患者さんに以前よりもバック駐車に時間がかかる、カーブを曲がる際にレーンをはみ出してしまうという50代前半のタクシー運転手さんがいました。入院して精査し、若年性パーキンソン病と診断され、タクシー運転手をやむなく辞められた方がいます。診断された時のショックと職を失うことによる絶望感の表情は今でも忘れられません。
病気は残酷で、患者さんの人生を思うと胸が締め付けられるようなことばかりです。
治療のために全力を尽くすことはもちろんですが、それぞれの生活の背景も踏まえた上で、患者さんの気持ちに寄り添えるような医師になりたいと思います。