2020-10-2

あんしん先生blog5「消化器内視鏡」

突然ですが、内視鏡検査を受けたことはありますか?

 

内視鏡には硬性鏡、軟性鏡、カプセル型の3種類があります。基本的に内視鏡で最もポピュラーなのは軟性鏡のタイプで消化器内視鏡の上部消化管内視鏡・下部消化管内視鏡です。人間ドックの検査によっては項目に含まれているものもありますよね。

 

そもそも消化器内視鏡検査を受ける場合は、吐血や下血、血便などの症状を有した場合、またはがんやポリープ、潰瘍などの精査目的に使われます。便潜血:陽性があると大腸がんの可能性があるため、下部消化管内視鏡検査が必須になります。検査自体は基本的に15~30分以内で検査前に食事を禁止して消化管内をきれいにした状態で行うことが望ましく、下剤を飲んで腸内を空っぽにして行います。現在、検査時には医師はN-95マスク・フェイスシールド・帽子・プラスチックガウン・手袋着用で実施しています。飛沫感染のリスクもあり感染対策もしっかり行う必要があります。

 

私は学生の時に若手医師の内視鏡検査の練習台として上部消化管内視鏡検査を受けたことがありますが、鎮静剤を使用しなかったので辛かった記憶があります。検査中には空気をお腹の中に送るので、検査後はおなかが張って大変でした。

実際の検査では、鎮静剤を使用して少しの苦痛もなく受けることが出来ますので、全く心配はいりません。

 

この消化器内視鏡の分野では日本は世界でもトップクラスです。内視鏡的軟膜下層剥離術(ESD)や内視鏡的粘膜切除術(EMR)などの治療があります。前者は早期胃がん、早期大腸がんなどに対して適応があり、後者はポリープ切除などにおいて適応があります。かつては手術でしか治療できなかったことが、開腹せずに病変部位を取り除くことができるという利点があります。つまり、侵襲度が低く、患者への負担が少なくなり、入院期間が短くなるなど大きな利点があります。ただ内視鏡自体はとても高価でカメラなどを含めて機材をすべて揃えるのには約1,000万円かかるそうです。友人のフィリピン人医師に聞いたところ、フィリピン国内では消化管内視鏡は数台しかないそうです。つまり、日本で内視鏡で治療できることがフィリピンでは基本的に手術になるそうです。

 

現在の日本では、胃癌はピロリ菌除菌のお陰で減少傾向である一方、食事の西欧化によって大腸がんは増加傾向です。近い将来、日本で健康診断にも内視鏡検査が取り入れられていく可能性があり、そうなるとそこで早期発見・治療ができることになります。今後、内視鏡の需要は高まり、より受けやすい検査として定着していくことになるでしょう。厚労省の大腸がん検診「便潜血」は40歳以上を対象としています。したがって、40歳を超えてご心配な方は是非一度、便潜血の判定にかかわらず、内視鏡検査を受けてみてはいかがでしょうか。

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