2020-11-9

あんしん先生blog6「妊娠・出産」

妊娠・出産がどれくらい大変か、皆さんはご存知でしょうか?

私自身、男性ですから、その大変さについてわかるはずもありませんが、
ただ、医師として出産を目の当たりにし、妊娠すること出産することがどれほどすごいことなのか実感しています。
妊娠・出産は本当に奇跡の連続です。先進国の日本においても、毎年50人弱の妊婦が出産によって亡くなっています。出産は命がけと言っても過言ではないのです。産婦人科で研修していた時に、何度もお産に立ち会いましたが、その度に女性の強さ、そして出産後の母の逞しい姿に尊敬の念を持ちました。

ここで2019年の日本の人口統計を見てみましょう。
出生数は、86万5,239人(←2018年:91万8,400人)
合計特殊出生率は、1.36(←2018年:1.42)とどちらも減少しています。
(*合計特殊出生率:調査年次の15〜49歳の女性の年齢別出生率を合計したもの。1人の女性が年齢別出生率で一生の間に産むとした時の子供の数。2を切ると現在の人口を維持できません。)
そして、死亡者数は137万6,000人と出生数を大きく上回っています。
このような状況が続くと少子高齢化社会がますます進んでいきます。

では、現在のコロナ下において出産数はどうなったと思いますか?
先輩の産婦人科医に聞くと、コロナ下では出産数の減少・望まない妊娠の減少傾向とのことです。将来に不安がある状況では子を持つことをためらう人が少なくないのでしょう。

晩婚化が進み、現在の第1子出生時の平均年齢は30.7歳と30歳を超えています。
第1子出産時にDown症になるリスクは基本的に約1000人に1人と言われていますが、第1子出産時が35歳時だと約300人に1人、40歳だと約100人に1人と確率が上がっていきます。このような事情から出生前診断が現在行われています。ただし、この問題はとてもシビアで賛否両論があります。

出生前診断には、「非確定的検査」と「確定的検査」の2種類があります。
前者は超音波検査や母体の採血によって調べるもので胎児への影響が少なく、侵襲性の低い検査として有効です。一方、後者は羊水や絨毛を検査するもので胎児への影響も0ではなく、侵襲性の高い検査として、より疑われるケース等に用いられます。検査を受ける場合は遺伝子情報を扱うため、基本的には遺伝カウンセリングも受ける必要があります。万全な体制の構築が今後より一層求められていきます。

昨今では高齢出産が多くなっており、不妊治療も積極的におこなわれるようになりました。が、この分野は未だ発展途上であり、保険適応外で高額な上に、妊娠に至る確率も決して高くはありません。現在の政府による不妊治療の補助がどこまでされるかはわかりませんが、個人的には、明確な基準、例えば、「年齢の期限を決める」など方針をはっきりさせる必要があるように思います。

現在では体外受精児の数も増えており、2017年で18人に1人が体外受精児というデータがあります。今後はますますそのような方法での妊娠が増えていくでしょう。

介護の世界でも、少子高齢化により、親の介護問題、独り身、独居など問題が山積みです。
この問題を解消するためにも、明るい未来を描ける社会を作り安心して子供を作れる環境を整えることが大事だと思います。
*現在、弊社では、育休が終了して職場復帰した社員が1名、産休育休中の社員が2名、そして不妊治療の後妊娠した社員1名、不妊治療中の社員が1名おります。これからも働く女性の妊娠・出産を応援していきたいと思います。

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